トマトパークだより-第56便-
『トマトパーク徳島特集 新規大規模農場の立ち上げについて』
新規大規模農場「トマトパーク徳島」で栽培が始まってから半年以上経過しました。今回は、トマトパーク徳島農場長の猿山さんに新規大規模農場の立ち上げについてのインタビューを致しました。
【徳島の栽培状況を教えてください。】
2020年8月19日に定植を行い、栽培面積1 .1haで業務用海外品種のカナバロ (ENZA ZADEN) を栽培しています。現在、25名 (社員、派遣社員、パート従業員を含む) で活動しています。
図1.トマトパーク徳島 栽培室(2021年3月)
【大型施設準備の主なスケジュールを教えてください。】
農場長の立場として行う栽培準備に関してご説明します。大まかな準備内容は、苗の準備(品種や栽培総本数の決定)、作業場や事務所で使用する備品の選定と購入、パート従業員の募集・採用です。栽培開始を2020年8月に予定していたため、最も時間がかかると予想された苗の準備は2019年の10月頃から始めました (表1) 。トマトパーク徳島への配属は2020年4月付でしたが、ハウスが建設中だったことやコロナ禍による影響もあり、実際にハウスが稼働する直前までトマトパーク栃木で準備を行いました。トマトパーク徳島で現場に即した準備はできなかったため、トマトパーク栃木を参考に資材や事務用品の選定を行いました。細かい資材や事務用品は現場で必要になってから用意することも多かったです。
2019年10月~12月にかけてトマトパーク徳島で使用する苗の育苗を依頼する業者を選定しました。ロックウール苗の育苗が初めてとのことで、2020年2~4月にかけて、何度か苗の試作をしていただきトマトパーク栃木で評価を行いました。本作の納品時期が繁忙期であったため、早い段階で育苗スペースの確保と納品日についての打ち合わせを行い、2020年4月に苗の発注をしました。
施設の大まかな仕様は決まっていましたが、栽培ベッドの配置や高さは図面を見ながら施工指示者と打ち合わせを行いました。コンセントの位置や機械室のレイアウトなどは変更できるギリギリまで検討し要望を反映していただきました。レイアウトの検討と同時に備品等の選定と発注作業も行い、特に誘引具やロックウールマットなど輸入が必要な資材は納品までに3カ月ほどかかるため、早めに発注をしました。購入する備品や購入先によって、発注から納品までの期間が大きく異なるため、余裕を持ったスケジュールで行動することが重要だと感じました。
さらに、定植の準備に向けて8月頭から働いていただくパート従業員を雇用する必要がありました。私自身馴染みがない土地での採用活動であったため、十分な人数を確保できるか不安もあり、早めに募集を始めました。2020年の2月頃から募集を開始し、コロナ禍ではありましたが、応募いただいた方と6月に現地で採用面接を行いました。
その後、7月にトマトパーク徳島へ移動し、現地での備品購入や配置の最終確認等を行いました
表1.農場長の準備スケジュール
【備品の選定や配置はどうされましたか?】
建設用図面を基に、配置を変えた図面を自ら数パターン作成し、作業場の配置と作業の流れをイメージしやすくしました。収穫物の置き場や選果する場所、出荷待機中の箱をどこに置くか、どの資材をどこに置けば作業効率が良いのか、様々な角度から検討しました。トマトパーク栃木での実務経験を活かして、トマトパーク栃木の改善点を反映した備品の選定や配置をしました。特に、水栓の配置や数、肥料・農薬の作成など水を大量に使う作業場所の配置は、作業効率に大きく関与し、使用目的を考慮した水栓口径や構造の選択が重要になります。
さらに、トマトパーク徳島では、GLOBAL G.A.P. (以下、GGAP) 認証を目標にしているため、安全な農場運営を念頭に備品の選定や配置をしました。GGAPとは、安全・高品質な農産物生産を実現するGAP(Good Agricultural Practice=適正農業規範)のヨーロッパ発の国際認証です。食品の安全性の観点からトマトに触れる作業の前に手洗いが必須となるため、休憩所の出入口の近くに手洗い場を作ることで選果作業や収穫作業の前に忘れずに手を洗える配置にしました (図2) 。また、農薬散布には上水の使用が必須となるため、作業場の農薬作成場や栽培室内の水道は上水を引いています。また、一度決めた配置など、食や作業の安全を脅かすリスクを少しでも低減させるため、運用しながら日々改善しています。
図2.作業場略図
矢印は、動線を表しています。休憩所から選果場や栽培室に移動する動線内に手洗い場を経由できる配置になっています。
【設計や農場立ち上げで心掛けたとはありますか?】
パート従業員の方々が長く勤めたい、働きやすいと思ってもらえるように、休憩するスペースを充実させました。トマトパーク栃木と同様に女性のパート従業員が多いと考えられたため、トマトパーク徳島では女性更衣室や女性専用のトイレを充実させ、少しでも快適に過ごしていただけるようにしました。もちろん、男性パート従業員の更衣室、トイレも充実しています。
また、ハウスの立上げ時に雇用した方々はハウスでの作業経験がほとんど無く、なるべく全員が同じ作業を経験するように作業計画を立て、指導を行いました。
【施設準備で工夫したことはありますか?】
ハサミやナイフを手作りの収納ケースで保管をしています。備品と収納場所のそれぞれに番号を付けているため、一目で返却されていないことが分かり、紛失や収穫コンテナ等への異物混入などの可能性を迅速に把握できます (図3) 。さらに、トレーサビリティの観点から、農薬に関するトラブルや出荷箱への異物混入など、食品安全性に関する問題の発生を想定し、確認対象を追跡できるよう選果実施日のロットナンバーを出荷箱に印字しています。
図3.刃物類収納場所
収納場所にも通し番号を振り、何番の備品がないか一目でわかるようにしています。
作業に関しては、作業人数が多く、栽培室も広いため、「どの作業を」「誰が担当して」「どこまで終わったか」を把握するために作業記録用紙を使用しています (図4) 。作業担当者が変わっても続きから作業できる、作業進捗状況を把握しやすく作業計画を立てやすいメリットがあります。
図4.作業記録用紙
トマトパーク徳島では、栽培列ごとに番号を振っています。
列番号が記載された栽培室略図に作業者が作業を担当する列に名前を記載します。
作業を途中で辞める場合は、どこまで完了したか矢印で記載します。
【今後の目標を教えてください。】
今作は収量50t/10aの達成を目標としています。今後は、安定した収量実績と経営を目指します。トマトパーク徳島では、業務用の海外品種を栽培しています。国内における業務用トマトの供給は、輸入がメインであり、これをすべて国産に変えたいという強い想いで栽培しています。
『トマトパーク栃木 栽培状況 4月』
4月に入り、晴れるとやはり日射は強く、パートさんは早くも空調ベストを着用しています。
大玉トマト -栽培室①-
【栽培ノート:2021年3月16日~2021年4月15日】
定植:2020年8月18日 品種 穂木:りんか409(株式会社 サカタのタネ)、 台木:フレンドシップ(株式会社 サカタのタネ) 栽植密度3.6本/m2 (増枝中) |
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生育状況 |
総草丈:547.9 cm、茎径:8.45mm、開花花房:20.7段 収穫花房:13.8段 積算収量:21.19 t/10a |
栽培作業 |
収穫、誘引、腋芽、摘花、摘葉、つる下ろし |
病害虫防除 |
コナジラミ防除、灰色かび病防除、うどんこ病防除 |
ミニトマト -栽培室③-
【栽培ノート:2021年3月16日~2021年4月15日】
定植:2020年8月18日 品種 穂木:TY千果(タキイ種苗 株式会社) 台木:TTMー079(タキイ種苗 株式会社) 栽植密度:4.2本/m2 |
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生育状況 |
総草丈:992cm、茎径:9.83mm、開花花房:30.7段、 収穫果房:23段、積算収量:16.06 t/10a |
栽培作業 |
収穫、誘引、腋芽、摘葉(直上葉)、摘葉、つる下ろし |
病害虫防除 |
コナジラミ防除、灰色かび病防除 |
写真1 大玉トマト
写真2 ミニトマト
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