トマトパークだより-第52便- | トマトパーク

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トマトパークだより-第52便-

『栽培室3(ミニトマト)栽培状況』

〈はじめに〉

 栽培室3の部屋では例年、トマトパークアカデミー生の2年生が栽培管理を行っています。アカデミー生は1年次に植物生理や栽培管理の知識を座学やOJTを通して学び、日々の実習で作業技術を身に付け2年目を向かえます。

 しかし、今年は2年生がいないという状況下で、誠和の新入社員が栽培担当を行っています。本来であればアカデミー生のようにベースを身に付けてから管理を行いたいところですが、環境制御の基礎を短期間で身に付け今作をスタートしました。

 日々、周りの方の手を借りながら環境設定や栽培管理を試行錯誤し、トマトの反応を見ながら栽培管理を行っています。

 

 今作は「千果」をメインに栽培し、TTM台木・フォルタミーノ台木で栽培比較を行います。また、試験的に欧州品種の「Juanita」も栽培しています。さらに、12月末にはLEDの導入が予定されており、年明けから2段階に分けて増枝を行い、「40t/10a」の収量を目指します。

 

〈栽培状況〉

 定植から4カ月が経とうとしていますが、ミニトマトは栄養生長に傾いた期間が長く続きました。

 標準的な茎径が8mm程度とすると、それぞれ「千果」9~10mm台、「Juanita」10~11m台となりました。

 葉長・葉幅も50㎝台と大きくなりました。

 要因として、以下の3点を考えました。

 

 ・日平均気温が低かったこと

 ・LAIが大きかったこと

 ・日平均の飽差が低かったこと

 実際にグラフで例年と比較してみます。

図1 日平均気温(2018年、2019年度作比較)

 

 図1は、ハウス内の日平均気温の推移です。図中の水色の線が今年の値を示します。

 日平均気温は例年と比べて9月、10月あたりが若干低く推移しています(グラフ内囲い部分)。ここは、日射量が減少してくる時期でもあり、適切な温度管理の範疇であったと考えます。それ以外の時期に関しては、例年通りもしくはやや高めであり、このことから栄養成長に傾いた要因とは考えられないといえます。

図2 LAI(2018年、2019年度作比較)

 次に、LAIの比較です(図2)。10月中旬からフォルタミーノ(水色線)、TTM(濃緑線)ともにLAIが例年(グリーンセーブ台木)より大きくなっています。樹勢が強い台木の特徴が出たためか、両者の葉は大きくなりました。

 そこで、適正なLAIになるように、「葉かき」を徹底しました。

 しかしながら、LAIを大きくしてしまったことは、栄養成長へ傾ける要因のひとつになった可能性があります。

 

 図3 日平均飽差(2018年、2019年度作比較)

 最後に、日平均の飽差の値を比較しました(図3)。飽差は例年と比べると低く推移しています(水色線)。

 

 飽差が低かった原因としては2つあります。1つは作業遅れが発生し、10・11月は中々「葉かき」の作業に入ることができませんでした。LAIの項目でふれたように葉が大きく展開した結果、蒸散量が多くなり、ハウス内の高湿度環境を生み出してしまいました。

 2つ目は「除湿機」がうまく稼働していなかったことです。飽差が低くなると除湿機は運転を開始していましたが、排水動作でトラブルがあり、うまく除湿を行えていませんでした。

 これらの原因で飽差が低かったため、葉はより大きく展開し、果実を覆い隠すように樹形が形成されました。

 そのため、果実温が上がらず果実肥大は抑えられてしまい、養分が葉や茎に蓄積し、徐々に栄養成長に傾いていった可能性があります。

 

 以上のことから、ハウス内の飽差が低い事およびLAIの増大が、今回の栄養成長と結びついていると考えました。

 

 最近は、冬至に近づき日射量の低下とともに生育スピードも低下してきています。その影響で「誘引」の作業の時間が短縮され、遅れていた「葉かき」の作業にも入ることができ、LAIは理想の値に近づいてきています。そのため、生長点付近を見ると生育バランスをとり戻せていることが分かります。

 また、栄養成長に傾いてしまいましたが収量の方は、例年と比べると若干少ないものの、大きな差はありません。

 

「千果×フォルタミーノ」生長点付近の様子

 これからは、12月末にLEDの導入予定なので1回目の増枝を行っていきます。このままいけば適正な生育バランスになりそうですが、増枝後の負担に耐えるために、栄養成長気味の管理をしていきます。

 

 

トマトパーク栽培状況 12月

 12月に入り、この時期らしい気温の日が続くようになりました。大玉、ミニ収穫は順調ですが、高糖度2品種の糖度がなかなか8度に達しないことが心配です。

大玉トマト -栽培室①-

【栽培ノート:2020年11月16日~2020年12月15日】

定植:2020年8月18日

品種 穂木:りんか409(株式会社 サカタのタネ)、

          台木:フレンドシップ(株式会社 サカタのタネ)

栽植密度3.12本/m2

 生育状況  (12月15日現在)

 総草丈:333.9cm、茎径:10.4mm、開花花房:10段 

収穫花房:4.7段 積算収量:5.8t/10a

 栽培作業  

収穫、誘引、腋芽、摘花、直上葉とり、

葉かき、吊り下ろし

 病害虫防除 

コナジラミ防除、灰色かび病防除、

うどんこ病防除

 

ミニトマト -栽培室③-

【栽培ノート:2020年11月16日~2020年12月15日】

 定植:2020年8月18日

 品種 穂木:TY千果(タキイ種苗 株式会社)

    台木:TTMー079(タキイ種苗 株式会社)

 栽植密度:3.12本/m2

 生育状況  (12月15日現在)

総草丈:572.4cm、茎径:8.8mm、開花花房:15.3 段、

収穫花房:8.8段、積算収量:5.7t/10a

 栽培作業  

 収穫、誘引、腋芽、摘花、直上葉とり、葉かき、

 吊り下ろし

 病害虫防除 

 コナジラミ防除、灰色かび病防除、うどんこ病防除

写真1  大玉トマト

写真2 ミニトマト

 

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