トマトパークだより-第46便- | トマトパーク

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トマトパークだより-第46便-

ミニトマトの裂果について

  ミニトマトの裂果は収穫間近の果実が裂開して商品価値がなくなり、経営的にも非常に大きな問題になる生理障害です。現在のトマトパークでは、連休後の過熟の果実や8月定植後の高温期に肥大した低段の果実に裂果が発生するものの、他の期間にはほとんど問題にはなっていません。トマトパークではミニトマトの裂果を回避できている要因があると思い、環境管理とあわせて検証していきます。

写真1 トマトパーク ミニトマト栽培室

 

1.裂果の要因

 過去の研究からミニトマトの裂果には以下のような要因があげられています(太田,1996)。

  ①品種および果実特性(果皮や果肉の硬軟、果実の細胞の形状、果実糖度等)

   : 果皮が柔らかい品種は裂果しやすい。

  ②収穫ステージ

   : 完熟している果実が裂果しやすい。

  ③肥培管理および潅水方法

   : 高濃度培養液管理で裂果しやすく、過剰な潅水で裂果しやすい。

  ④果実の濡れ(露地栽培か施設栽培か)

   : 果実が濡れていると裂果しやすい。

  ⑤ハウス内の温湿度

   : 夜間湿度80%以上かつ昼夜の気温較差が10℃以上で裂果しやすい(Drews,1978)。

  ⑥果実の直射日光の受光状態

   : 果実に直射日光があたり、果皮が損傷を受けると裂果しやすい。

  ⑦蒸散の抑制

   : 葉や果実表面からの蒸散が抑制されると、果実への水分流入が増加し裂果しやすい。

 

2.トマトパークの環境管理

 プロファインダークラウドでトマトパークのミニトマト栽培室(栽培室③)の2019年作の環境グラフを見てみましょう。グラフ1はミニトマト栽培室の昼平均気温、夜平均気温、昼気温-夜気温、夜平均飽差を表示しました。15℃での相対湿度80%は飽差では3.4です。

 前項1.裂果の要因の⑤ハウス内の温湿度では相対湿度80%以上かつ昼夜の気温差が10℃以上で裂果が発生しやすいと記述しましたが、トマトパークのミニトマト栽培室ではこの条件に該当する期間はありませんでした。

グラフ1 トマトパーク ミニトマト栽培室の環境グラフ

3.裂果に関するミニ実験

 トマトパーク栽培室③のミニトマトで裂果に関するミニ実験を行いました。

 ①ミニトマトの果房に袋をかぶせると・・・

  ミニトマト果房に袋をかぶせてから約20分で相対湿度が約100%になり袋内面に結露が発生しました。 

  一晩経過後に果実の状況を確認したところ、裂果の発生は見られませんでした。袋内部に結露が発生し、果房からの蒸散が確認できました。

写真2  袋で被覆したミニトマトの果房

 

 ②ミニトマトを水に漬けると・・・

  ミニトマト2果を水に漬け一晩放置すると、大きく裂開しました。水に浸漬する前の果実重量は19.4gと18.9g、浸漬後に表面の水分をふき取り測定した重量は19.6gと19.2gで、約0.2gの水が吸収されていました。

写真3  水に浸漬し劣果したミニトマト

 

4.ミニトマトの裂果を防ぐには?

 ミニトマトの裂果を防ぐには前述の裂果の要因を回避することが有効です。

 品種選びでは、トマトパークで現在栽培しているTY千果(タキイ種苗株式会社)、TY花鳥風月(ナント種苗株式会社)は耐裂果性の高さがセールスポイントになっています。

 京都大学 太田氏の研究では、ミニトマトの裂果は午前5時から午前7時に約56%発生していました。ミニトマトの果実横径には日変動があり午前6時頃に最大になり、その後午前9時から午前12時頃に最小になり、その後夜間に向けて肥大していきます。早朝の果実への水の流入が盛んになり、果実径が大きくなる時間帯にハウス内が高湿度になると葉や果実表面からの蒸散が抑制されて裂果を誘発します。蒸散促進による裂果回避方法として、風速約2m/sの送風が有効であったと報告しています。

 過去の試験結果を見ても裂果の発生メカニズムは複雑で完全な回避は難しいようです。しかし、湿度管理と送風と適切な遮光など複合的に環境管理を整えて裂果対策をしてみてはいかがでしょうか。

 

 

トマトパーク栽培状況 5月

大玉トマト -栽培室①-

【栽培ノート:2020年4月16日~2020年5月15日】

定植:2019年8月17日

品種 穂木:りんか409(株式会社 サカタのタネ)、

          台木:フレンドシップ(株式会社 サカタのタネ)

栽植密度3.12本/m2

 生育状況  (5月15日現在)

 総草丈:621.4cm、茎径:7.9mm、葉数:14枚、

 開花花房:33.7段、収穫段数:19.7段

 栽培作業  (5月15日~)

 誘引(巻きつけ)、下葉の摘葉、

 吊りおろし、摘花、わき芽取り、収穫

 病害虫防除 (5月15日~)

 コナジラミ防除、灰色かび病防除

 

ミニトマト -栽培室③-

【栽培ノート:2020年4月16日~2020年5月15日】

 定植:2019年8月17日

 品種 穂木:TY千果(タキイ種苗 株式会社)

    台木:グリーンセーブ(タキイ種苗 株式会社)

 栽植密度:3.12本/m2

 生育状況  (5月15日現在)

 総草丈:1105cm、茎径:9.9mm、葉数:14.7枚、

 開花花房:29.5段、収穫花房:27段

 栽培作業  (5月15日~)

 誘引、直上葉・下葉の摘葉

   吊りおろし、摘花、わき芽取り、収穫

 病害虫防除 (5月15日~)

 コナジラミ防除、灰色かび病防除、うどんこ病防除

 

写真4 大玉トマトの果実の様子

写真5 ミニトマトの果実の様子

 

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