トマトパークだより-第34便- - トマトパーク

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写真2 タバコカスミカメ

トマトパークだより-第34便-

タバコカスミカメの利用

 2018年の作も昨年より継続して、天敵昆虫のタバコカスミカメを利用した防除の取り組みを行ってきました。2年間を通じて印象強く感じたタバコカスミカメの特徴をご紹介いたします。

 

【食性の広さ】

 タバコカスミカメはトマトの主要害虫であるタバココナジラミ、オンシツコナジラミ、アザミウマ類を捕食します。タバコカスミカメの雌成虫が1日当たりに捕食するタバココナジラミの4齢幼虫は最大で56頭、ミナミキイロアザミウマの2齢幼虫では165頭と報告されています(中石,2013)。
 また、雑食性であるため虫だけでなく、植物から吸汁して栄養を摂取し、ある特定の植物だけで増殖することができ、バーベナ、クレオメ、ゴマなどをバンカー植物(天敵を温存する植物)として利用することができます。トマトパークでは、ロックウールにバーベナを定植してバンカーとしました(写真1)。トマトのみでは成虫まで生育することができませんが、培地に発生したハエなどを捕食して生きることができるといわれています。この雑食性という特徴が定着のしやすさに影響を与えていると思われます。

写真1 バンカーとなるバーベナの様子

写真1 バンカーとなるバーベナの様子

 

【確認のしやすさ】

 トマトで利用できる天敵の大きさは1㎜以下と目視しにくいものが多く、それと比較してタバコカスミカメの成虫は3㎜程度と大きく、定着状況を目視で確認しやすいといった特徴があります。幼虫は葉裏に確認されることが多く、成虫も幼虫もトマトの成長点付近で多く確認されます(写真2)。

写真2 タバコカスミカメ

 写真2 タバコカスミカメ

 タバコカスミカメの幼虫は発育零点(生育できる限界の温度)が15.9℃であり、それ以下では生育できないと報告されています(Yano et al.,2014)。トマトパークでは1日の平均気温が比較的高かったことから、冬でも増殖が確認されました。黄色粘着板にてコナジラミ類の捕獲数と比較することで、タバコカスミカメが増加傾向の場合、コナジラミ類の数が減少するといった天敵による防除効果を確認することができました(図1,2)。

図1 トマトパーク内平均気温図1 トマトパーク内日平均気温

 

図2 粘着板にて捕獲されたコナジラミ数

図2 粘着板にて捕獲されたコナジラミ数とタバコカスミカメ数の推移

 

【過剰増加による食害】

 一方で、タバコカスミカメを利用する上で、注意しなければならない点もあります。タバコカスミカメは雑食性であるため、密度が増えすぎてしまうとトマトの茎、がく、果実を食害してしまうことがあります(写真3)。あまりにも数が増え、栽培作物に被害が出るようであれば、タバコカスミカメに対しての防除が必要となります。

 なお、タバコカスミカメは国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構のご指導の下、内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP:エスアイピー)「次世代農林水産業創造技術」のプロジェクトの一環として実地試験を行いました。

写真3 タバコカスミカメの食害

写真3 タバコカスミカメの食害

 

引用文献:化学合成殺虫剤を半減する新たなトマト地上部病害虫防除体系マニュアル―個別技術集―

タバコカスミカメ利用技術マニュアル―施設トマト―(養液栽培)

中石 一英(2013)タバコカスミカメNesidiocoris tenuis(Reuter)およびコミドリチビトビカスミカメCampylomma chinense Schuhの生態と生物防除資材としての有効性に関する研究。

Yano E,Nakauchi M, Watanabe H, Hosaka S, Hayashi Y and Hinomoto N (2014) Reproduction of Nesidiocoris tenuis reared on Ephestia kuehniella eggs and Bemisia tabaci nymphys.

 

 

トマトパーク栽培状況 5月

大玉トマト -栽培室①-

【栽培ノート:2019年4月16日~2019年5月15日】

 定植:8月17日

 品種 穂木:りんか409(株式会社 サカタのタネ)、台木:フレンドシップ

 栽植密度:3.64本/m2

 生育状況  (5月15日現在)

 総草丈:617.2cm、葉数:14枚、開花段数:26.7段、

 収穫段数:21.2段目、収量:38.6t/10a

 栽培作業  (4月16日~5月15日)

 誘引(巻きつけ)、吊り降ろし、わき芽取り、摘花、

 中間葉・下葉の摘葉、果梗切り、収穫

 病害虫防除 (4月16日~5月15日)

 うどんこ病防除、コナジラミ防除

 

ミニトマト -栽培室③-

【栽培ノート:2019年4月16日~2019年5月15日】

 定植:8月17日

 品種 穂木:TY千果(タキイ種苗 株式会社)、台木:グリーンフォース

 栽植密度:4.2本/m2

 生育状況  (5月15日現在)

 総草丈:1164.9cm、葉数:17.8枚、開花花房:34.5段、

 収穫段数:28段目、収量:23.5t/10a

 栽培作業  (4月16日~5月15日)

 誘引(巻きつけ)、吊り降ろし、わき芽取り、摘花、

 中間葉・下葉の摘葉、果梗切り、収穫

 病害虫防除 (4月16日~5月15日)

 うどんこ病防除、コナジラミ防除

 

※トマトパークでは、5月8日に「レディヒート」を散布いたしました!!

 詳しくは“トマトパークだより4月号”をご覧ください!

 

  写真4 大玉トマトの果実の様子              写真5 ミニトマトの果実の様子           

写真4 大玉トマトの果実の様子             写真5 ミニトマトの果実の様子

 

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