トマトパークだより-第30便-
側枝伸長について ~昨年の振り返りと今年の管理方法~
2018年8月17日の定植で栽培がスタートしましたが、定植後にハウス内気温が45℃を超える日や、9,10月は連続した曇りの日があり、毎年のことながら、トマトの管理において悩まされる天候でした。ようやく冬至(2018年12月22日)を超え、徐々に日射量も強くなり、積算日射量も増加していき、トマトにとっては、環境をコントロールしやすい時期がやってきました(グラフ1)。日射量の増加により、光合成産物の生産も増大し収量が伸びていきます。
グラフ1 積算日射量の年間推移(週平均値)
トマトパークでは、日射を無駄なく利用するためにも、日射量の増加に合わせて栽植密度を増やしていく管理を行っています。例年どおり年末年始の休暇中に伸びてきた腋芽を利用して生長点の本数を増やしていきます(写真1)。栽植密度は8月スタート時には3.1株/m²だったものから、6株中1株から腋芽を出し、栽植密度3.6株/m²に増やします。
栽植密度の増加には、収量増大以外にも様々な目的があります。
一つ目の目的は適切なLAI(葉面積指数)を保つことです。日射量が増えると株もコンパクトになり、葉も小さくなってきます(グラフ2)。葉面積を確保することで、ハウス内の湿度保持や高温期の気化熱によるハウス内の気温低下、果実に直射日光を当てないことで果実の日焼けを防ぐなどの目的があります。
写真1 腋芽の出た生長点の様子
グラフ2 2017年および2018年度作の生育調査:葉長の変化(品種“りんか409”)
二つ目は果実サイズのコントロールです。光合成が増えれば、果実肥大も進みます。しかし、大きくなれば良いということではなく、トマトの売れ筋サイズはL、M、Sサイズです。果房あたりの着果数を増やすことで果実サイズを大きくならないようにすることもできますが、日本の大玉品種は花房の1番花の肥大が強く、裾に行くほど果実サイズが小さくなる傾向があり、果実サイズを揃えるのは難しいです。
また、一つの花房に沢山つけると、果房あたりの重量が重くなり、吊りおろし作業などの衝撃で果房ごと落ちてしまうこともあります。そこで、果房あたりの着果数は4果のままで、単位面積当たりの花房数を増やすことで、目標の果実サイズに収めることが目的です。昨年度の作付けの果実サイズの変化をみると、3月、4月は3L,2Lサイズが増加傾向でL,M,Sサイズの割合が約70%、5月は3L,2Lサイズの割合が減少し、L,M,Sサイズが約80%とすることができました(グラフ3)。6月以降は呼吸消耗も増え、登熟日数も短くなるので、徐々に小さいサイズの割合が増えていきます。
グラフ3 2017年度作の果実サイズ
栽植密度を増やすことで収穫量と収益の増大を狙っていきますが、増やす腋芽の選定や誘引紐(フック)の追加、また腋芽から収穫を開始する時期が3月下旬ごろとなり、生育スピードが速くなる中で、誘引などの管理工数が増加するため、工数の確保も必要となってきます。
腋芽を残して栽植密度を増やすのは、環境の光条件だけではなく、良い腋芽が出てくるトマトの生育状況や栽培管理の工数の状況などを考慮する必要があります。また、急激に栽植密度を増やすのではなく、段階的に増やしていく方法もあり、各圃場の管理方針に合わせた管理が必要となります。
写真2 2019年1月上旬からの様子 写真3 2019年1月上旬のハウスの様子
トマトパーク栽培状況 1月
大玉トマト -栽培室①-
【栽培ノート:2018年12月16日~11月15日 】
定植:8月17日 品種 穂木:りんか409(株式会社 サカタのタネ)、台木:フレンドシップ 栽植密度:3.12本/m2 |
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生育状況 (1月15日現在) |
総草丈:340.8cm、葉数:11枚、開花段数:13.8段、 収穫段数:9.2段目、収量:12.45t/10a |
栽培作業 (12月16日~1月15日) |
誘引(巻きつけ)、吊り降ろし、わき芽取り、摘花、 直上葉・下葉の摘葉、果梗切り、収穫、 側枝伸長(栽植密度を増加させる作業) |
病害虫防除 (12月16日~1月15日) |
なし |
ミニトマト -栽培室③-
【栽培ノート:2018年12月16日~1月15日 】
定植:8月17日 品種 穂木:TY千果(タキイ種苗 株式会社)、台木:グリーンフォース 栽植密度:3.12本/m2 |
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生育状況 (1月15日現在) |
総草丈:645.5cm、葉数:15.7枚、開花花房:18.3段、 収穫段数:12段目、収量:8.61t/10a |
栽培作業 (12月16日~1月15日) |
誘引(巻きつけ)、わき芽取り、摘花、 直上葉・下葉の摘葉、収穫 |
病害虫防除 (12月16日~1月15日) |
うどんこ病防除 |
写真4 大玉トマトの成長点の様子 写真5 ミニトマトの成長点の様子
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