トマトパークだより-第53便- - トマトパーク

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トマトパークだより-第53便-

『栽培室④の2020年度栽培について』

 トマトパークでは、黄化葉巻病対策を今年度の重要なテーマとして栽培を行っています。

 2019年度作はトマト黄化葉巻ウイルスを媒介するコナジラミの防除に失敗し、多くの株が黄化葉巻ウイルスに感染したことで減収となりました。その中でコナジラミの天敵昆虫(生物農薬として登録予定)である「タバコカスミカメ」を放飼していた栽培室4は、栽培室1に比べ、被害を少なく抑えることができました。

 本栽培室では例年に引き続き、化学農薬と「タバコカスミカメ」の組み合わせによる防除効果を検証し、IPMを利用した栽培の安定化と収量増加を目指しています。

 なお、黄化葉巻病の防除においてコナジラミの増加を防ぐことが第一ですが、さらなるリスクヘッジとして黄化葉巻耐病性品種への切り替えを検討しています。トマトパークでは過去4年間、「りんか409」を主要品種として栽培してきたため、品種の入れ替えをするにあたり品種特性を理解しておく必要があります。そのため、今作からは収量性と耐病性を兼ね備えた「麗妃」の試験栽培を開始しました。

以下、これまでの経緯と状況をご紹介します。

1.IPM(総合的病害虫管理)ハウスとして「タバコカスミカメ」利用の実証

図1. 施用前の「タバコカスミカメ」

表1.大玉トマト各栽培室のコナジラミ捕獲数(匹)

 

タバコカスミカメ放飼

9月

10月

11月

12月

栽培室1(りんか、ひなた) 

10

36

27

50

栽培室4(IPM麗妃)

1

4

7

22

栽培室5(麗妃)

×

2

7

30

22

※各栽培室(1200 m2)に粘着板を6枚設置し週に1度集計(月次数値は6枚総数×週)

 栽培室1(3780 m2)、栽培室5(1140 m2)は栽培室4と合わせ1200 m2換算

 栽培室5は外気導入システムを利用

 

 表1は各栽培室における9月からのコナジラミの捕獲数です。

 栽培室4では、10月から2度にわけて「タバコカスミカメ」を計3000匹放飼しました。栽培室1でも同密度の「タバコカスミカメ」を放飼しましたが、コナジラミの捕獲数は栽培室4よりも多い結果となりました。

 コナジラミの増加に関しては、天窓やハウスの隙間といった外部からの進入も疑われます。下野市のこの時期は特に西風が強いため、今後ハウスの構造、栽培室の配置、周辺の雑草の状況などコナジラミの侵入の可能性をより詳しく調べるつもりです(図2)。したがって、捕獲数だけで防除効果を判断するのはまだ早いのですが、栽培室4での「タバコカスミカメ」の増殖スピードが栽培室1よりも早かったことを目視で確認しており、今後捕獲数の差が出てくることを期待しています。

図2. トマトパーク略図

 現在、「タバコカスミカメ」の幼虫が確認できたことで、栽培室内で生活環が形成されたことが分かりました(図3)。2019年度作、コナジラミによる被害が多くなる春先から夏の期間で明確な防除効果が出ましたので引き続き調査を行っていきます。

図3.「タバコカスミカメ」の幼虫(12/10)

 ただし、2019年度作では課題もありました。春先にコナジラミの急増とともに「タバコカスミカメ」も増加しました。しかし、その後コナジラミの数が減少したことで頭数のバランスが崩れ、「タバコカスミカメ」によるトマトへの食害が増加してしまいました(トマトパーク便り 第34便参照)。

 今作では「タバコカスミカメ」の急激な増加を招かないよう、コナジラミの頭数把握と化学農薬による初期防除を組み合わせて対策しようと考えています。特に、気温の上昇とともに「タバコカスミカメ」の頭数が増加することが分かっています。そこで、「タバコカスミカメ」の頭数調査を行い管理していきます。

 

2.麗妃の黄化葉巻病耐病性評価

図4. 栽培室4の状況(1/13)

 各栽培室の黄化葉巻罹病株数を調査しましたが、先述のとおりコナジラミ捕獲数に大きな差があるため黄化葉巻耐病性を持つ品種(栽培室4)と、黄化葉巻耐病性を持たない品種(栽培室1)の黄化葉巻罹病率に関する比較はできませんでした。引き続き調査していきます。

 図5は黄化葉巻ウイルスに感染した「麗妃」です。非耐病性品種の病徴と比べると生長点が黄化して矮化するという病徴は同じですが、葉巻の症状が軽いという特徴を確認できました。見慣れた病徴と異なるため罹病株の見落としには注意が必要です。

図5.黄化葉巻罹病株(麗妃)

 (注)耐病性とは発病条件の影響を受けやすい特性(㈱サカタのタネ, 「大玉トマト『麗妃』」参照)で病徴が軽微ですが、トマトパークでは黄化葉巻耐病性を持たない品種も栽培しているためハウス内に侵入したコナジラミが黄化葉巻ウイルスを媒介しないように軽微な症状であっても撤去しています。

 

3.収量

図6. 「りんか409」と「麗妃」の収量比較

 図6より、栽培室4の「麗妃」(青線)は栽培室1の「りんか409」(緑線)よりも9%収量が多く、12/25時点では収量性に問題がないことが分かりました。

 また、「麗妃」は「りんか409」に比べて玉揃いがよく、樹姿は節間が長く葉は大きく展開し折れやすい特徴があります。

 

4.感想

 私は2020年の4月に誠和に入社し、1年間トマトパークで研修という形で勤務しています。大学では農学を専攻していたため植物の基礎は理解していましたが、実際の栽培管理については全くの無知で、実際のハウス温度が設定した暖房設定温度・換気温度のラインに沿った動きにならないことすら知りませんでした。

 担当ハウスをもつようになってからは環境制御機器を微調整して理想的なハウス内環境に整えていく難しさに直面しています。手探り状態で始まった環境制御だったため他の栽培室と同じ設定にしてみましたが、各栽培室の”癖”により自分で考えなければならないと気付かされました。

また、環境制御のミスにより栽培環境が悪化し、作業に追われて環境制御や病害虫管理に割く時間が短くなってしまうという負の連鎖が起きてしまいました。

 日々トマトと向き合っていると様々な問題に面しますが、周囲からのアドバイスによって困難な状況を乗り越えられたことで成長できていると感じます。現時点までの9か月間の研修で、トマトパークが高収量を実現する力を試行錯誤しながら身に着けることのできる貴重な環境であると実感しています。トマトパークは農業を営む上で必要不可欠な管理作業や環境制御等の施設園芸に関する知識や技術を包括的に学ぶことができます。就農を志す方にはぜひ経験していただきたいです。

【引用文献】

株式会社トマトパーク,「トマトパーク便り第34便」(参照2020-01-25)

株式会社サカタのタネ,「大玉トマト『麗妃』」 (参照2021-01-29)

 

トマトパーク栽培状況 1月

ミニトマトの栽培室3で現在LEDランプを設置中です。今月から補光を始めます。

大玉トマト -栽培室①-

【栽培ノート:2020年12月16日~2021年1月15日】

定植:2020年8月18日

品種 穂木:りんか409(株式会社 サカタのタネ)、

          台木:フレンドシップ(株式会社 サカタのタネ)

栽植密度3.12本/m2

 生育状況  (1月15日現在)

 総草丈:388.5cm、茎径:10.5mm、開花花房:12.3段 

収穫花房:7段 積算収量:8.8t/10a

 栽培作業  

収穫、誘引、腋芽、摘花、直上葉とり、

葉かき、吊り下ろし

 病害虫防除 

コナジラミ防除、灰色かび病防除、

うどんこ病防除

 

ミニトマト -栽培室③-

【栽培ノート:2020年12月16日~2021年1月15日】

 定植:2020年8月18日

 品種 穂木:TY千果(タキイ種苗 株式会社)

    台木:TTMー079(タキイ種苗 株式会社)

 栽植密度:3.12本/m2

 生育状況  (1月15日現在)

総草丈:688.2cm、茎径:10mm、開花花房:18.7 段、

収穫花房:11.7段、積算収量:7.9t/10a

 栽培作業  

 収穫、誘引、腋芽、摘花、直上葉とり、葉かき、

 吊り下ろし

 病害虫防除 

 コナジラミ防除、灰色かび病防除、うどんこ病防除

写真1  大玉トマト

写真2 ミニトマト

 

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